製造ラインの塗布工程に携わって20年以上になる、中原修一です。
自動車部品メーカーで接着・シーリング工程の自動化を手がけてきました。
いまはFAコンサルタントとして、設備導入の相談を受けています。

ディスペンサーは、自動車部品の液体ガスケット塗布から電子基板への接着剤塗布まで、製造現場のあらゆる場面で使われています。
「1液型ディスペンサーって、結局どういう場面で使うの?」という質問をよく受けるので、2液型との違いや現場での選び方のポイントを整理してみます。

1液型と2液型の違い

ディスペンサーには「1液型」と「2液型」があります。

2液型は主剤と硬化剤を混合して使うタイプです。
混合比率の管理やミキシング機構が必要なぶん、装置構成が複雑になります。
硬化速度が速く密着性に優れますが、導入・運用のコストは高め。
混合ノズルの定期交換や洗浄の手間もかかるので、運用体制が整った現場向きです。

1液型は混合が不要です。
湿気硬化型の接着剤やシーリング材など、1種類の液剤をそのまま吐出します。
装置がシンプルで、メンテナンスの手間も少ない。
液剤の交換や段取り替えもラクなので、多品種少量の生産ラインとも相性が良いです。
「まず塗布工程を自動化したい」という現場では、1液型から始めるケースが多いです。

吐出方式の種類と特徴

1液型ディスペンサーにもいくつかの吐出方式があります。
キーエンスの解説ページにも体系的にまとめられていますが、代表的なものを整理します。

  • 空圧(エアシリンジ)方式:圧縮空気で押し出す汎用タイプ。導入しやすいが、高粘度では吐出量が不安定になりやすい
  • プランジャー方式:モーター駆動のピストンで一定容積を押し出す。粘度変化の影響を受けにくく高精度
  • スクリュー方式:回転するスクリューで連続送液する。幅広い粘度帯に対応
  • ジェット方式:液を飛ばして非接触で塗布する。高速塗布に向く

どれを選ぶかは、使う液剤の粘度と求める精度で決まります。
低粘度の液剤であれば空圧方式で十分なケースも多いですが、粘度が上がるほど方式の選定がシビアになってきます。

高粘度材料を扱う現場での選び方

接着剤、シーリング材、グリスなど粘度の高い材料を扱う現場には、特有の悩みがあります。

  • 吐出量がばらつく
  • ノズル先端で糸を引く
  • 配管内の圧力損失が大きい
  • 気泡が抜けにくい

空圧方式だと、液の残量や温度で粘度が変わるたびに塗布量がブレます。
これは品質トラブルに直結します。
私が以前担当した自動車部品のシーリング工程でも、夏場と冬場で粘度が変わり、塗布量のばらつきに苦労しました。

高粘度材料には、プランジャー方式のように機械的に容積を制御する仕組みが向いています。
モーター駆動でピストンを動かし、一定の体積を正確に押し出すので、粘度が多少変動しても吐出量が安定します。

プランジャーポンプ搭載の1液型ディスペンサーは各メーカーから出ています。
たとえばナカリキッドコントロール(NLC)のP-FLOWシリーズ H型は、高粘度材料に特化したモデルです。
仕様や対応粘度の詳細は高粘度対応ディスペンサーP-FLOW H型の製品ページで確認できます。

NLCは1981年創業のディスペンサー専業メーカーで、吐出方式ごとの仕組み解説も公開しています。
方式選定で迷ったときの参考になります。

まとめ

1液型ディスペンサーは、混合機構が不要でシンプルな構成が最大の利点です。
ただし高粘度材料を扱うなら、吐出方式の選定が品質を左右します。

空圧方式で吐出量が安定しないなら、プランジャー方式への切り替えを検討する価値はあります。
メーカーによってはテスト機での試し塗布に対応しているところもあるので、導入前に実際の液剤で検証するのがおすすめです。
設備選定は「何を塗るか」から逆算する。これが現場で失敗しないための鉄則です。