こんにちは、桐生亜希子といいます。
38歳で結婚してから5年間不妊治療を続けて、体外受精は6回。
43歳のときに早発卵巣不全と診断されて、そこから卵子提供という選択肢を本気で調べた経験があります。
当時の私が最初につまずいたのは、治療そのものではなく「渡航」でした。
卵子提供は海外で受けるのが一般的と聞いて、パート勤務と義母の介護を抱えた自分には無理だと、一度は資料を閉じたんです。
ところが最近、あらためて調べ直してみると状況が変わっていました。
「海外で卵子提供を受けつつ、妊娠期間は日本で過ごす」という選択肢が、現実的なプログラムとして存在しています。
結論から言うと、答えは「本当」です。
ただし仕組みは1つではなく、大きく2つのパターンがありました。
この記事では、私が一次情報(エージェント公式サイト、法務省、学会関連の資料)を当たって確認できた範囲で、その仕組みと費用、法律面の現状をまとめます。
同じように「渡航がネックで迷っている」方の判断材料になればうれしいです。
目次
そもそも、なぜ卵子提供は「海外」が中心なのか
最初に前提の話をさせてください。
日本では、第三者から卵子の提供を受ける体外受精が法律で禁止されているわけではありません。
ただ、日本産科婦人科学会が1983年の見解以来、第三者の配偶子を使う体外受精を長く自主規制してきた経緯があります。
国内で実施しているのは、JISART(日本生殖補助医療標準化機関)の会員施設など、ごく限られた医療機関だけです。
JISARTは2008年に独自のガイドラインを作り、カウンセリングや倫理委員会の承認を経て卵子提供を実施しています。
その経緯はJISARTの公式サイトに詳しくまとまっています。
問題は時間です。
手続きが丁寧なぶん、治療開始までにおよそ1年かかるとされています。
私が診断を受けたのは43歳でした。
「1年待つ」という言葉の重さは、40代で治療している方なら説明不要だと思います。
だから多くの人が、アメリカや台湾など海外での卵子提供を選んできた。
これが現状の背景です。
「海外での卵子提供=長期滞在」だったこれまでの流れ
従来型の海外卵子提供は、渡航の負担がかなり大きいものでした。
私が5年前に資料請求したときのメモを見返すと、こんな条件が並んでいます。
- 渡航は2回前後必要(採卵・受精の段階と、移植の段階)
- 1回の滞在が1〜2週間程度になるケースもある
- 現地での通院には言葉の壁がある(通訳の有無はエージェント次第)
- 仕事や介護を長期間空けるための調整が必要
夫婦そろって渡航が必要なタイミングもあります。
共働きで、しかも40代。
2人同時に2週間の休みを取るのは、うちの場合は不可能でした。
このハードルで諦めた人、実はかなり多いんじゃないかと思っています。
日本で妊娠期間を過ごせる仕組みは、大きく2パターン
ここからが本題です。
調べていくと、「妊娠期間を日本で過ごす」には2つのルートがありました。
パターン1:海外で移植を受けて、帰国後は日本で過ごす
1つめはシンプルです。
海外の提携クリニックで卵子提供による体外受精と胚移植を受け、妊娠判定の後は帰国して、妊婦健診や出産は日本の産科で行うパターン。
渡航自体はなくなりませんが、滞在は移植前後の期間だけで済みます。
つわりが重くなる時期や、切迫流産のリスクが気になる時期を、慣れた日本の医療環境で過ごせるのは大きな安心材料です。
パターン2:受精卵を日本へ輸送し、国内で移植する「国内完結型」
2つめが、ここ数年で広がってきた仕組みです。
海外で採卵・受精・培養までを行い、凍結した受精卵(胚)を日本国内の医療機関へ輸送して、移植は日本で受けるという流れです。
具体的なステップはこうなります。
- カウンセリングとドナー選定(対面またはオンライン)
- ご主人の精子凍結と感染症検査(日本国内で実施)
- ドナーの採卵、受精、培養(海外の提携クリニックで実施)
- 希望に応じて着床前検査(PGT-A)
- 凍結胚を日本へ輸送し、国内の連携医療機関で移植
このパターンの最大の特徴は、依頼者夫婦の海外渡航が不要になる点です。
精子凍結も国内、移植も国内。
海外に行くのはドナーさんと受精卵だけ、という言い方もできます。
輸送には「ドライシッパー」という液体窒素を充填した専用容器を使い、スタッフが受け取りから納品まで直接持ち運ぶ方法が一般的とされています。
航空便に預けるのではなく、人が付き添って運ぶわけです。
なお、国内での移植はどの病院でもできるわけではなく、エージェントが連携している医療機関で受けることになります。
自宅から通える範囲に連携先があるかどうかは、契約前に必ず確認したいポイントです。
もう1つ、妊婦健診を受ける産科には、卵子提供による妊娠であることを最初から共有しておくことをおすすめします。
経緯を伝えたうえで診てもらえる環境のほうが、妊娠期間を安心して過ごせるはずです。
2つのパターンを整理すると、こうなります。
| 項目 | パターン1(海外移植+日本で妊娠期間) | パターン2(国内完結型) |
|---|---|---|
| 採卵・受精・培養 | 海外 | 海外 |
| 胚移植 | 海外 | 日本国内の連携医療機関 |
| 依頼者の渡航 | 必要(移植前後の滞在) | 原則不要 |
| 妊婦健診・出産 | 日本 | 日本 |
| 向いている人 | 短期なら渡航できる人 | 仕事や介護で家を空けられない人 |
私のように介護で長期間家を空けられない人間からすると、パターン2の存在は正直、衝撃でした。
5年前にこれがあったら、検討の土俵にすら乗らなかった選択肢が乗っていたはずです。
実際に対応しているエージェントの例:モンドメディカル
では、こうしたプログラムをどこが提供しているのか。
調べた中で、受精卵の国内輸送と国内移植への対応を公式サイトで明記していたのが、株式会社MONDOMEDICAL(モンドメディカル)でした。
公式サイトの情報を整理すると、次のとおりです。
- 2015年設立、東京・日本橋の卵子提供エージェント
- 日本人ドナーの登録は約400名(2026年時点・公式サイト)
- 提携先はサンフランシスコ、サンディエゴ、ハワイなどアメリカの不妊治療クリニックが中心
- 卵子提供プログラムの基本費用は約260万円〜(依頼者の渡航費、国内での診察費、PGT-A、凍結胚の保管費などは別途)
- 海外で作成した受精卵を国内の医療機関へ輸送して移植するプログラムを案内
代表の方が、人材関係の仕事をしていた頃に「海外での卵子提供のために退職せざるを得ない」という相談を受けたのが創業のきっかけだそうです。
渡航負担を減らす方向にサービスを設計しているのは、この経緯と無関係ではない気がします。
ただ、私はエージェントを1社だけ見て決めるのは反対の立場です。
自分が検討していたときも、資料請求は複数社に出して、条件を横に並べて比べました。
各社の提携先やドナー数、補償制度の違いは、モンドメディカルをはじめ主要エージェントの評判や特徴を比較したページが一覧になっていて把握しやすいです。
比較の起点として、まずこういうページで全体像をつかんでから個別に資料請求する流れをおすすめします。
1つ正直に書いておくと、ネット上で見つかる卵子提供エージェントの口コミは、公式サイト掲載の体験談や紹介記事が中心です。
中立的な第三者の声はまだ少ないので、最後は面談での対応や契約書の中身、費用に含まれる範囲を自分の目で確かめてください。
法律面はどうなっている?「産んだ人が母」という原則
卵子提供を考えたとき、私が費用の次に不安だったのが「生まれた子の親子関係」でした。
ここは2020年に大きな整理がされています。
「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」(令和2年法律第76号)の第9条で、他人の卵子を用いた生殖補助医療で子を産んだ場合、出産した女性がその子の母と定められました。
つまり、海外でドナーの卵子提供を受けて日本で出産しても、法律上の母は産んだ本人です。
条文の内容は法務省の解説ページで確認できます。
一方で、ドナーの情報管理や「出自を知る権利」まで踏み込んだ「特定生殖補助医療に関する法律案」は、2025年2月に国会へ提出されたものの、成立には至っていません(2026年7月時点)。
審議の経過は参議院の議案情報で見られます。
親子関係のルールは確定している。
でも、生まれた子が将来ドナーの情報にどこまでアクセスできるかは、まだ制度が固まっていない。
この非対称は、検討するうえで頭に入れておくべきポイントだと思います。
費用の考え方と、調べていて感じた注意点
最後にお金の話です。
海外卵子提供の費用は、渡航先と方式でかなり幅があります。
| 方式・渡航先 | 費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| ハワイ(従来型・渡航あり) | 合計約705万円 | 比較サイト掲載の内訳例。渡航費・滞在費含む |
| ロサンゼルス(従来型・渡航あり) | 合計約548万円 | 同上 |
| 国内完結型(モンドメディカルの例) | 基本費用約260万円〜 | 渡航費が不要な一方、国内診察費・PGT-A・凍結胚保管費などは別途 |
国内完結型の金額だけ見ると半額以下に見えますが、この比較はフェアではありません。
「基本費用」に含まれる範囲が各社バラバラだからです。
検討時のチェックポイントを挙げておきます。
- 提示された金額に何が含まれ、何が別途なのかを書面で確認する
- 採卵がうまくいかなかった場合の補償や追加費用の扱いを聞く
- 提携先の国・地域は国際情勢や現地の法規制で変わることがあるので、最新の提携状況を確認する
- 契約前に、国内の主治医や生殖医療の専門家にも相談する
とくに1つめは重要です。
比較サイトでも「初期費用が安く見えたのに追加料金が膨らんだ」というトラブルへの注意喚起がされていました。
総額の見積もりを複数社から取って並べる。
地味ですが、これが一番効きます。
私自身、5年前の検討時には3社から資料を取り寄せて、項目名がそろわない見積もりをExcelで無理やり同じ表に落とし込みました。
「採卵補償」「培養費」「コーディネート費」など、社ごとに呼び方も範囲も違うので、そのままでは比較になりません。
面倒でも「この項目は御社の見積もりだとどれに当たりますか」と1つずつ聞く。
その質問への答え方で、エージェントの誠実さもある程度見えてきます。
まとめ
「海外での卵子提供、日本で妊娠期間を過ごせるって本当?」への答えをまとめます。
本当です。
海外で移植を受けて帰国後は日本で過ごすパターンと、受精卵を日本へ輸送して移植から国内で行う国内完結型の2つがあり、後者なら夫婦の海外渡航自体が不要になります。
法律面では、出産した女性が母になるという原則が2020年の法律で明文化済みです。
一方、出自を知る権利などを定める新しい法律はまだ成立していないので、制度の動きは今後も確認が必要です。
5年前の私は、渡航のハードルだけで検討を打ち切ってしまいました。
いま同じ場所に立っている方には、「渡航できないから無理」と結論を出す前に、選択肢が増えている現状をまず知ってほしいです。
そのうえで、費用の内訳と契約内容を細かく確認し、必ず医療の専門家にも相談しながら、ご夫婦にとって納得のいく判断をしてください。
